『岩手山と太平洋、被災地・原発と世界遺産平泉』
毎日松川の写真を撮っているうちに、この水はどこから発しどこへ流れ下るのか興味がわいた。松川の源流は八幡平と岩手山に囲まれた大きな谷だ。そして当地から松川を10キロほど遡ると岩手山の伏流水が豊富にわき出ている湧水群がある。この湧水も松川の水となる。通称「金沢清水」はその代表で日本名水百選にも選ばれ、一日3.4万トンもの水が湧き出ている。この岩手山と八幡平に源を発した水は松川となり、更に北上川と合流して約250キロを流れ下り、宮城県石巻市で太平洋に注いでいる。
石巻市は今回の約500キロに及ぶ大津波被災地の真ん中に位置する。そして北上川の河口は新と旧がありY字型となっている。その間には牡鹿半島があり、今回かろうじて津波被害を免れた女川原発が立地している。一見脈絡のない岩手山と太平洋、被災地、原発が北上川を介して密接につながっていることを再認識。
盛岡の四十四田ダムができるまでは石巻湾から鮭が当地まで大量に遡上、そして岩手山の赤松が筏に組まれ流れ下った悠久の豊かな風景がかつて存在した。そして更に昔の平安時代、坂上田村麻呂も仙台の多賀城を拠点にこの北上川沿いに当地まで“蝦夷征伐”にやって来た。その後仏教が伝わり、シルクロード最東端の北上川中流域に世界遺産となる平泉文化の花を咲かせる。海も東北の歴史も人も文化も、そしてさまざまな生命もみなこの水に育まれてきたのである。