『無常』
瀬戸内寂聴さんも今回の震災のメッセージで使っていた仏教用語の「無常」という言葉(「無情」ではありません)、最も有名な文はもちろん『平家物語』冒頭である。
祗園精舎の鐘の声、
諸行無常の響きあり。
娑羅双樹(しゃらそうじゅ)の花の色、
盛者必衰の理(ことわり)をあらは(わ)す。
おごれる人も久しからず、
唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、
偏(ひとえ)に風の前の塵に同じ。
「諸行無常」とは「仏教の根本思想で、万物は常に流転して少しの間も常住しないということ(広辞苑)」とある。日本人が絶望の淵にありこころが折れそうな時、一筋の希望を思い描くための慰めの言葉としても用いられてきた。寂聴さんも戒めではなく「良いことばかりが続くことはなく、同じように悪い状態が永久に続くこともない」「必ずそれは終わります。あるとき気付けば、暗い運命にも光は射し始める」と語っていた。